【見学レポート】穏やかな甘みで素材を引き立てる「北海道産ビートグラニュ糖」ができるまで

桂新堂のお菓子づくりに使用している、北海道産ビートグラニュ糖。

えびせんべいに砂糖?と、少々意外に思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも実は、えびの旨みを引き立てる、なくてはならない原材料のひとつ。

そんなビートグラニュ糖について学ぼうと、えびせんべいづくりを手がける職人とともに、北海道伊達市にある製糖工場を訪ねました。

普段はなかなか見ることのできない、貴重な製糖工場の様子をお届けします!

 

ビートグラニュ糖とは?

 

はじめに、「ビートグラニュ糖」とはどんなものなのか、少しご説明しましょう。

 

砂糖の原料はサトウキビとてん菜(ビート)の2種類があり、後者のてん菜を原料にしたものが「ビートグラニュ糖」です。

サトウキビが沖縄や鹿児島などの温暖な気候の土地で育つのに対し、てん菜が育つのは寒冷地。日本では北海道でのみ栽培されています。

てん菜は砂糖大根とも呼ばれ、カブによく似たほうれん草の仲間。太陽に向かって、青々とした葉を広げて光合成を行い、根の部分に糖をたっぷり蓄えます。

 

こちらが収穫された、てん菜の根。まるで、大きなジャガイモのようです。

手と比較すると、おおよその大きさがイメージしていただけるでしょうか?

ビートグラニュ糖は、そのてん菜の根を100%原料とする、天然の甘味料味わいはクセがなく、さっぱりとした甘みと、まろやかな風味が特徴です。ちなみに、てん菜の「甜(てん)」の漢字は、“舌”に“甘い”と書くんですよ。

1日3000トンほどのてん菜から約400トンを製糖する、北海道糖業の「道南製糖所」

現在、日本国内の砂糖供給量のうち、約60%が海外からの輸入品です。(※)そんな中、桂新堂では「安心安全で美味しいお菓子を届ける」との想いから、国産原料を吟味。そこで出合ったのが、北海道産ビートグラニュ糖です。

今回見学に伺ったのは、北海道糖業株式会社が運営する昭和34年操業開始の製糖工場、「道南製糖所」です。

工場は北海道南西部に位置し、農業や水産業が盛んな自然豊かな環境にあります。 てん菜には、大きく分けて「糖分型」「重量型」の2つの品種があり、それぞれの地域に適した品種が育てられているそうです。

さて、上の写真、何だかお分かりでしょうか?

広大な敷地に、見渡す限り大量に積まれたこちら……実はすべて収穫したてん菜なんです!

北海道糖業道南製糖所の製糖量は、1日3000トンほどのてん菜から約400トン。オホーツク地方の北見市にある製糖工場などを合わせると、北海道糖業全体では北海道で製造する砂糖の1/4量を作っているというから驚きです。

 

原料が砂糖になるまで

収穫したてん菜はきれいに洗浄し、糖分を取り出しやすいよう、細長く截断されます。ひとくち試食をしたところ、ほんのり甘みはあるものの、この段階ではエグミのほうが強く感じられました。

写真:石灰を入れて不純物を沈殿させる炭酸飽充槽

截断したてん菜は、温水につけて糖分を抽出。糖分抽出液をろ過します。その際、糖液に石灰を入れ、不純物と結合して沈殿させます。これにより、化学薬品を用いずに安全に不純物を取り除くことができます。

写真:ろ過機で、不純物のない糖液の上澄みだけを集めます

その後、糖液を煮つめて濃度を高め、真空結晶缶で結晶化して熱風で乾かし、ようやく私たちがよく知る砂糖になります。

煮つめた糖液を結晶化する、真空結晶缶

こちらは、糖蜜を取り出した後のてん菜。無駄にすることなく、家畜などの餌に活用されています。

ビートグラニュ糖を使ったお菓子

えびせんべいづくりには、用途や味わいに応じて複数の砂糖を使い分けています。中でも、北海道産ビートグラニュ糖はクセがなく、どんな素材とも相性がよいことから、定番から季節のお品まで多くのお菓子に使われています

たとえば、桂新堂を代表する作品「炙り焼き」。優しい甘みのビートグラニュ糖が入ることにより、えびの旨みや香ばしさを邪魔せず、素材の良さを引き立ててくれます。

また、季節の絵柄を施すプリントえびせんべいにも欠かせません。他の砂糖に比べて、焼き色を抑えて白く焼き上がることから、絵柄の豊かな彩りが一層映えるのです。

 

見学を終えて

今回は、桂新堂のお菓子づくりに欠かせない、北海道産ビートグラニュ糖の工場見学レポートをお届けしました。

北海道糖業の担当者によると、出来上がった砂糖は色や糖度、水分値、粒形に至るまで、細かく品質チェックし、それをクリアしたものだけが製品として出荷されるそうです。砂糖の一粒一粒に詰まった、つくり手の技術と、惜しみない手間暇。丁寧に作られた上質な素材を使わせていただいていることに、改めて感謝の気持ちが湧いてきました。

焼き上がってしまうと、目には見えない存在。でも、だからこそ私たちは素材選びにきちんと責任を持ちたい。

えびせんべいの品質と美味しさ、そして安心安全は、こうした素材一つひとつに支えられています。

※参考資料 農林水産省 令和6年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し

(https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/kansho/attach/pdf/satou-36.pdf?utm_source=chatgpt.com)