高級食材として知られ、えびの中でも特に旨みが強いと言われる車えび。
桂新堂のえびせんべいづくりにはかかせない存在です。
先日、鹿児島県の車えび養殖場を見学させていただきました。
車えびについて
まずは車えびそのものについて少しご紹介いたします。
茶褐色の縞模様を持ち、お腹を丸めた時に模様が車輪のように見えることから、この名がついたとか。
特筆すべきは、青から黄色にかけてのグラデーションが美しい尻尾です。
熱を加えると、外殻は美味しそうな赤色に変わります。
桂新堂では車えびを「姿焼き」「あられ焼き」に使用しています。
養殖池の環境
こちらの養殖場では、鹿児島県の沖から200mほど離れた地点で、水深15メートルほどのところから海水を引いて車えびを育てています。
池の表面には茶色の珪藻(植物性プランクトン)が浮かんでおり、水中の窒素やリンを吸収して酸素に変える役割を担っています。
綺麗な状態の海水より、プランクトンが多い海水のほうが車えびにとっては過ごしやすい環境なのです。
池の中では水車が回り、海水の注水・入れ替えを毎日行って清潔な状態を保っています。
人の手でも清掃が行われており、潜水士が池に入り残渣や車えびの死骸を取り除くなど、手間暇かけて池内の環境を整えています。
水揚げの様子
池の中に仕掛けた網かごを引き上げると、実に活きの良い車えびが!
水しぶきを上げながら、その身をピチピチと勢いよく跳ねさせています。
7月下旬のこの日は20~30個ほどの網かごを水揚げしていましたが、繁忙期の11~12月では1日100個ほど水揚げするそうです。
次々に水揚げし、水が入ったコンテナに入れていきます。
仕分けの様子
水温約25℃の池から約15℃の水槽で20~30分ほど一時冷却をして車えびの動きを鈍くした後に、約14℃の水につけて選別を行います。
大きさはもちろん、殻の柔らかさや傷の有無などを1~2秒の目視と手触りで瞬時に仕分けるその姿はまさに職人技です。
車えびは1キロあたりの数量で分類しており、30サイズは1キロで30尾、50サイズは1キロで50尾を意味し、数字が小さいほど大きいサイズのえびとなります。
梱包の様子
仕分けた車えびを梱包する工程も見学させていただきました。
こちらは贈答用の車えび。綺麗に整列させて箱詰めをします。
箱の中が12〜13℃になるように保冷剤を入れて出荷し、納品時には15℃くらいになるよう調整をしています。
箱の中の温度が高すぎても低すぎても車えびが死んでしまうため、季節やその日の気温に応じて発泡スチロールの厚みや保冷剤の数を調整しているそうです。
車えびの生育について
その後は車えびの生育について、少しお話を伺いました。
車えび養殖場では「養殖池」の他に「種苗槽」「親魚棟」という水槽があります。
「親魚棟」で成体の車えびが産卵した卵から孵化した赤ちゃん・車えびの種苗を「種苗槽」で1ヶ月ほど稚えびになるまで育てたのち、養殖池に投入します。
小さなサイズの車えびは池に種苗を投入してから約5か月ほどで出荷しますが、30型等の大きなサイズのものは半年~9か月ほどかけて生育します。
「餌は何を食べていますか」と質問したところ、実物を見せていただきました。
魚粉などを小麦と混ぜて固めた配合飼料で、香りは金魚の餌に似ています。
生育状態に合わせて餌の大きさや上げる回数を変えているそうです。
・成体のえび→5~6ミリ程度の餌を1日1回
・稚えび→2~3ミリ程度の餌を朝昼晩3回
・種苗→2時間置きに餌やり
実はえびは共食いをする生き物なので、しっかり餌を与えてあげることも重要なポイント。
車えびをすべて水揚げした池は水を抜き、耕うん機で下に敷いた砂を起こし、天日消毒をして次の生産の準備をします。
あとがき
今回の車えび養殖場見学を通じて、水揚げから仕分け、梱包までの各工程には職人の技と手間暇が詰まっており、その手間暇が桂新堂の品質の一部となることを改めて感じました。
特に、水の清浄度や餌の与え方など、細部にわたる配慮が車えびの美味しさを支えています。
車えびの魅力とその育成過程に触れ、私たち自身も新たな視点を得ることができました。
こうした背景を意識しながら、より一層の感謝の気持ちを持ってえびせんべいづくりに励んで参ります。