桜のたより

麓(ふもと)より優しく染行く　山桜。
青葉の中に　ひとつ、ふたつとほころぶ蕾。
霞(かすみ)か雲か見渡すかぎりの花ざかり。
暖かな春風に乗って踊る花弁は、ちらり、ちらりと薄紅色の雪を降らせます。

吉野山を訪ねて

古来より人々を魅了してきた、桜。
奈良県の吉野山の桜は「吉野桜」と呼ばれ、多くの文人墨客(ぶんじんぼっかく)が訪れています。
中でもこの桜をこよなく愛したと言われているのが西行法師。
彼の歌には吉野山を題材にしたものがいくつか残されています。
吉野山の桜

吉野山は、約三万本二百種の桜が植えられており、麓から山頂にかけて下千本、中千本、上千本、奥千本と四つのエリアに分けられています。
下千本の桜から順に開花していくため、様々な桜の姿を一度に楽しむことができます。
また、満開の時期の中千本からの景色は壮観で「一目千本(ひとめせんぼん)」と呼ばれています。
西行法師と吉野桜

西行法師は、生前約二千二百首の歌を後世に残した歌人です。
花や月を好み、その中でも特に桜を愛した彼は、吉野山の奥地に小さな庵を結びました。
そして三年間お経を唱えるように歌を詠んだと言われています。
彼が過ごした庵は「西行庵」と呼ばれ、現在もその地にひっそりと佇(たたず)んでいます。

※由来、解釈は諸説あります。

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