桂新堂のえび愛

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えびを取り巻く環境

環境について 多くの栄養が流れ込む三河湾

渥美半島と知多半島に囲まれた三河湾は、矢作川や豊川、境川といった代表的な河川やその他中~小の川から多くの栄養が流れ込みます。
同様に伊勢湾には木曽川、揖斐川、長良川の木曽三河を代表に庄内川や鈴鹿川などの多くの川から栄養が流れ込む豊かな湾です。

三河湾は水深が浅く、太陽の光が比較的湾内の水域全体に注ぎ込むため植物プランクトンの光合成が活発でよく繁殖します。これをエサに動物プランクトンや様々な小型水生生物が多く繁殖しており、えびたちはこれらの栄養豊富な生物をエサとして生活しています。そのため、えびたちも美味で栄養豊富なものとなります。
これに対し、伊勢湾は平均水深20メートル弱程と言われており、三河湾ほど浅くはありませんが、貝類や渡り鳥なども多く生息する場所となっています。

伊勢湾・三河湾 地図 三河湾には、えびや海産水中生物たちにとって必要な干潟や広い砂地が昔に比べ減少してはいるものの、一色・六条・汐川・伊川津などに残っています。 干潟には水質浄化と栄養の循環、小型生物の成長場として大切な役割を果たすアマモを代表とする海草が育っています。えびたちの子供はこの干潟で栄養豊富なエサを食べ、外敵から身を守りながらすくすく育ちます。海で生き物を採集する機会がある場合、砂地ではえびの子供を見ることも多くあります。

伊勢湾・三河湾 地図

このあたりに住むえびについて 多種多少な中型〜小型のえび

三河湾や伊勢湾周辺の沿岸では、猿えび、赤えび、虎えび、きしえび、車えび、芝えび、熊えびなど、比較的たくさんの種類の中~小型のえびが見られます。

猿えび、赤えびは通称アカシャエビと呼ばれこの辺りでは殻がやわらかく煎餅に向いています(瀬戸内海産では殻が硬い傾向にあるようです)。 他の海域ではそれほど多く見られないえびたちです。赤えびは比較的水が綺麗な場所に住み、味は他のえびに比べやや落ちます。現在の三河湾では数がやや多く、これは三河湾の水がきれいになっていることを示唆します。きしえびは主に粉にしてえびせんべいに使用されます。

猿えび・きしえび・芝えび・熊えび・車えび・赤えび・虎えび 車えびは味が良く名前の知れたえびの一つです。愛知県の魚にも指定されています。車えびは子どもの頃は沿岸で育ち、成長と共に深場に移動します。 愛知県では底曳網漁法の打瀬と言われる漁師たちにより比較的深い水深で捕獲されます。沖合の深場で産卵し、産まれた稚えび(プランクトン)は潮の流れで沿岸の干潟などに定着し稚えびとなり育つので生涯の初めを海流(潮流)に左右されます。
熊えびは俗にいうブラックタイガーの一種で南方に住むえびですが、最近ではよく見られるようで温暖化による影響が示唆されます。

猿えび・きしえび・芝えび・熊えび・車えび・赤えび・虎えび

漁獲について 車えびの漁獲は全国1位

えびの漁獲量は残念ながら全盛期の1996年あたりの800トンから約10分の1の量になっています。昔は「えびが沸いている」というくらい獲れ、畑の肥料などにもされるほどでした。「えびで鯛を釣る」という言葉もありますが今では鯛でえびを釣りたいほどになった状況です。

車えび漁獲量 全国1位 減った原因は一昔前は農薬の影響が懸念されていました。これを規制したことにより一時数は増加しましたが再び減少。干潟や砂地の減少、漁師の減少、青潮・赤潮なども影響しているかと思われます。
それでも車えびは県の魚にも指定されており、漁獲は全国1位になっています(農林水産省:海面漁業生産統計調査2020年版による)。同じく、アサリやガザミ(ワタリガニ)も全国トップクラスで、不安はあるもののまだまだ三河湾は豊かな環境ではあります。

車えび漁獲量 全国1位

放流事業 最も歴史の古い放流

車えびはこの地域では非常に多くの稚えびの放流がなされています。全国でも最も歴史が古く(昭和40年代から試験放流している)年間2000万尾の放流がされており、全国ナンバーワンです(2位は数百万尾の放流量のため桁が違う!)県内4~5か所の状態の良い砂地へ放流されています。
特定できる遺伝子を持った稚えびを放流し、放流効果がわかるように研究されています。

[協力]
蒲郡市竹島水族館 館長 小林 龍二 氏
愛知県水産試験場・漁業生産研究所
参考資料
  • 愛知県水産試験場調査報告書:昭和16 年度愛知縣産重要蝦類生態調査(1942)
  • 愛知県水産試験場調査報告書:昭和49 年度太平洋中区栽培漁業漁場資源生態調査(1975)
  • 水産増殖62 巻2 号:西部遠州灘におけるクルマエビの産卵開始と終了の時期( 水藤勝喜・奥村卓二・山根史裕・柘植朝太郎・小椋友介・山野恵祐,2014)